濵ちゃんの足跡

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28.NCC/3Gの大失敗

NCCオペレータの流れが急変した。グループの3G化のパイロット的役割から、3Gシフトを垂直立上げでやるという。それも日本主体ではなく、グローバルが仕切ると。

プリペイド機で大成功したNCC事業。さあ、どうする。NCC事業の開発責任者は、それまで、GSM機のODMでコンタクトのあった台湾のT/F社を使い、Q社のプラットフォームでやり切るという。GSM機はモデル機があった。3G機は陰も形もない。それでもやり切れると頑張る。Q社のプラットフォームを長年にわたって使い込んでいるSA社に聞いてみる。とても無理だという。A社にも聞いてみるが答えは同じ。NCC事業の開発責任者だけができないとは言わない。

ところが、これに、トップが載った。プリペイド機で大成功した実績がある。できないと言わない。こうやればできるという。実に耳に心地よい発言を繰り返す。社内外の見識者はだれもできないと見ている。彼の今までの成功は、すべて既存の技術と製品があって、それをモディファイしたものだ。ゼロからプラットフォームを開発したり、使いこなした経験は皆無。ほんとうの技術開発の苦しみを知らない。が、あばたもえくぼ。こうなると、できないという人間が悪者になる。なぜ、できるという者がいるのに協力しないのかと。もう、だれも反対意見を述べるものがいなくなった。それも、100万台コミットなら268Euでできるという。破格の値付けだ。

これを、恐れもせずに提案する。D社は絶対にできると。他社はすでに試作機ができていても、IOTの難しさや、S/Wの完成度のむずかしさにしりごみをしているというのに。当該オペレータは他社との比較において難しいとみている。ところが、蜜月のトップには、それが感じ取れない。オペレータは20万台ならコミットすると提案した。当然、D社はビジネスにならないので降りるものと想定して。ところが、これをトップ交渉で「Yes」とした。残り80万台はD社の努力で販売するという。当該オペレータ以外には売れない特殊仕様のものを、どうやって別に捌こうというのか。

これには、さすがにコーポレートが噛み付いた。結局、逆に、社内事情で受注できないという情けない方向になった。当然、何とか受注させたオペレータは怒る。実質的に出入り禁止状態になった。売れ残っているNCC向けのPDCが棚上げになった。手配済みの部品も残っている。莫大な損失である。

ところが、これだけに話は終わらない。そのオペレータが買わなくて、そんなに安くていいものがあるのなら、それを別のお客様がが買うという話が舞い込んだ。今度は、これに喰らいついた。赤字受注はだめという教訓から、@提示価格で20万台コミット、開発費50億円を条件にした。ところが、そのお客様は海外向けに作っているものをそのまま供給してくれればいいのだから開発費はだせないと。信じられないことに、今度はこの条件を飲んだ。こうなると何が本当かまったく分からない。交渉相手は、次々にいろんな条件を出してくる。それに、いちいち合わせ込むことができるということは、最初がうそなのか。逆に、相手は、いろんな条件をだしながら、どこが譲れない線か探っている。だから、動いていけないのだ。あがいてはいけないのだ。これが最低条件と言ったら、ガンとして動かないほうが信用を勝ち取れる。ひどい話だった。結局、からかわれただけで、この話も流れた。05年初秋、SA社よりQ社版の3G機が出荷された。開発に約2年を費やしている。Q社プラットフォームを使いこなしてきたSA社にして2年である。T/F社なんかにできる筈がなかったことが証明された。しかし、SA社の出荷をみて、ここまで振り返っている人が何人いるだろうか。

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