濵ちゃんの足跡

前のページ 次のページ 目次へ戻る

85.「一次近似」

「一次近似」という話をします。中学の1年生のときに習ったと思います(少なくとも下名はそうだったと思います)が、y=ax+bという、変数がひとつしかないあの直線一次式です。なぜこんな話をするかというと、いろんな会議やメールの中に、ピンとこない話が多く、もうちょっと気を遣うといいのに、と思うことが多いからです。一次近似は直線一次式ですが、アナログ的に言えば、まあ大体そうなるはずという目の子をつけることと同義です。何かを検討するとき、何かを考えたときに、ちょっと時間を使って、まあ大体そうかなと思えることが大事です。

もう時効になっているので話してもいいと思いますが、M電機で、沖縄に設置したアンテナが暴風で壊れたことがあります。そのときに、設計チームは当時の超最新の構造計算ソフトウェア「NASTRAN」で計算しているから設計は正しいと言い張ったのです。ところが、当時のT副所長が目の子計算をしてみると大幅に強度が不足する、それはなぜだ、なぜそんな間違いがおこるのかという話になったのです。

結果は、設計チームはNASTRANを過信していました。目の子計算をしていなかったのです。構造計算をするためにはたくさんの変数に数値を設定します。その数値に誤りがあったり、変数の選択に誤りがあった場合には、計算結果が大幅に狂ってくることは容易に分かってもらえると思います。それを防止するのが目の子計算、すなわち「一次近似」なのです。まあ大体この強度で問題ないはず、そうだよねというチェックです。これが大事なのです。例えばですが、下期の発注台数を議論するときに、単に仕入だけではなく、ちょっと時間を作って、売上げがどうなるのかなと計算してみるのも一次近似です。細かく計算する必要はなく、これで足るか足らないか、ちょっとした計算で見通しはつくのです。

市場規模は将来どう変化するのかという検討をするには、PCを含む全体規模の伸び率、法人比率、移行率、価格下落の影響度など、いろんなパラメータを考える必要があり、これを計算するにはPCを使わないととても難しいですが、それでも逆に、複雑な計算ほど大体こうなりそうという感覚がないと正しい計算を導くことが難しくなります。普段のどんな仕事でも、何かを行うときに、あるいは何かを考えたときに、ちょっと立場を離れて、「まあ大体この程度かな」と考えてみることが、大きな間違いをしない大事なやり方です。心がけて下さい。

前のページ 次のページ 目次へ戻る