濵ちゃんの足跡

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146.神戸大震災(2)

家はたいしたことはなかったので、すぐに会社が気になりました。ちょうど携帯電話の開発で、徹夜で実験室で測定させていることを思い起こしました。実験室には、10~20kgの測定器を山積みにしており、これの倒れ方次第では下敷きになり大惨事になるかもしれないとヒヤヒヤでした。急いで駆けつけてみると(自宅から徒歩で30分)、幸いにして、一番端で実験しており、倒れた方向も反対側でしたが、担当者は放心して、床にへたり込んでいました。

組立工場も同じように測定器の山ですが、ケーブルがちぎれたり、落下して壊れたりして完全に崩れておりました。そこで、即座に「この地震は関西だと思われるので東京には被害がないはず。東京のリース会社に連絡して必要な測定器をまず揃える」ことを決定しました。これが早かったこともあって、携帯電話の組立工場は僅か1週間で復活することができましたが、残念ながらパワーアンプを作る半導体工場の回復に3ヶ月掛かり、部品が確保できなくて往生しました。半導体工場は装置が動いて配管が外れ、いろいろな薬品やガスがあって、なかなか工場に入ることさえできなかったからです。

この地震でいろんな教訓を得ることができました。従来の常識を一番翻したのは、「地震があったらできるだけ早く外にでよ」というものです。従来は、「机などの下に隠れて地震が収まるのを待て、あわてて飛び出ると屋根から落ちてくる瓦や電線などが危険だから」というものでしたが、この大震災では約6000人の死者の大半が、家が倒壊したことによる圧死だったからです。

また、この地震を東京で起こったらどうだったかというシミュレーションも行われ、いろんな対策が施されました。そのひとつが「ペットボトルを持って歩け」というものです。大地震が発生すると交通手段はほぼ歩くことに限定されます。職場から自宅までとにかく歩くしか方法がありません。そのときに水が必要です。水さえあれば当分何とかなります。水の配給はガソリンスタンドと決まりました。ガソリンスタンドは危険なようですが、一番強固に作られていて安全です。ここに水が配給されますので、ここで水を確保して歩けば、家にたどり着けると言う訳です。

会社としては、常に行く先を明確にしておくこと、空になってもよいからペットボトルを持っていること、家族では、非難場所を確認しておくこと、バラバラになったときにどこに集まるか決めておくことなどが必要だと思います。なかなか非難器具や緊急食料を入れ替えたりはできませんが、最低限度の事は気をつけておく必要があると思います。

1月17日を迎えるたびに気持ちを新たにしたいと思います。

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