濵ちゃんの足跡

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閑話休題(3)最近読んだ本「犠牲」について

この本は、ノンフィクション作家として著名でテレビなどにもよく出ている柳田邦男が書いたもので、今までの著書とちょっと違うのは自分の家族で起こったことを、まさにノンフィクション、赤裸々に書いているところです。

本の中身は深刻です。柳田邦男は非常に優秀で丹念に仕事をする人で、何の問題もなくすばらしい人生を送っている人だろうな、くらいに思っていましたが、ところが実情はそうではありませんでした。

柳田邦男にはふたりの男の子がいます。長男は父親に似て非常に優秀で実に堂々と生きています。次男も非常に素直でやさしい性格でした。一見何も問題ないような家族に突然不幸が襲います。

それは次男が中学生のときのことですが、ふざけてチョーク投げして遊んでいたそのチョークが次男の目に当たり、結局は失明することなく治るのですが、治って学校に戻ったときに、級友が何気なく掛けた「試験を受けなくてよかったなあ」という言葉がきっかけになって神経症になっていきます。人に会うことが怖い、外に出ることが怖い、話せない、だんだんひどくなっていきます。そしてとうとう自分は世の中に役に立っていない、何のために生きているのか分からない、自分はこの世に不要な人間であるというように非常に内向的になっていきます。

その過程で奥様も神経症になり、最終的にその次男は自死を選びます。懸命の蘇生措置で一旦は回復するかに見えますが、11日後には本当に死んでしまいます。

この11日間に柳田邦男自身が考えたこと、家族がとった行動、医療機関がとった行動、人間としての愛情、冷静さ、医療貢献、尊厳死、家族愛、自分の立ち直り、それこそノンフィクションですから、次男の日記などを絡めつつ克明に記述されています。

いろんなことを考えさせられる一冊です。

文庫本でありますので、読んで見てください。お薦めします。

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