濵ちゃんの足跡

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閑話休題(17)映画「男の背中」(文庫本もでています)

物語は、こうです。50歳手前、大手ディベロッパーの部長(役所)が肺がんと診断されます。それも末期で、いきなり余命が半年と宣告されるところから話が始まります。家族は妻、大学生の兄、高校生の妹の4人家族ですが、何せ、余命半年ですから、ぐずぐずしているわけにはいきません。

最初に決断を迫られるのは、延命治療を受けるか受けないかの選択です。彼は入院加療したおばさんの例をひいて、延命治療で苦しんだり、動けなくなったりするのは嫌、残り半年を人間らしく生きたい、動ける間は動く、仕事ができる間は仕事をする、と判断して、延命治療はしないことを決めます。

次は、残された時間をどう生きるかと言う問題です。彼は、告白できなかった初恋の人、けんかして仲直りができていない高校時代の友人などにつぎつぎと会います。自分探しというよりは、行動で示すその人への「遺言」です。

仕事の問題もあります。最初は内緒にしながら仕事を続けますが、どうしても退職しなければならなくなったときに後継者を自分の意思どおりに通そうとします。

家族の問題もあります。自分が死んだ後に必要なお金を工面します。12年間も行き来していなかった兄に無理を言いに逢いにいきます。夫婦の話もあります。お互いに手紙を書くのです。

もちろん、闘病の場面もあります。セラピー、セラピニスト。海の見えるセラピーがいい。なぜなら海はほとんど景色が変わらないので時間を意識しなくて済む、というようないい言葉もでてきます。

死後の話もあります。実は彼には愛人がいるのですが、その愛人問題に加えて、その愛人に分骨する方法に悩みます。

もし余命半年と宣告されたら、いろいろ出てくるであろう問題を、非常にさらっと描いてあり、重いテーマでありながら、その場で観るものに考えさせる構成になっています。

冒頭で話たように、普段はまったく意識していない問題ですが、我々にとっても案外身近な問題かもしれません。一度、映画を観るなり、本を読むなりして、自分のこととして考えてみるのもいいかと思います。

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