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閑話休題(64)現代語訳「学問のすすめ」福沢諭吉 /斉藤 孝(訳)=ちくま新書
第6編 文明社会と法の精神(明治7年2月出版)
国民は一人で二人分の役割をつとめている。ひとつは自分の代理として政府を立てて国内の悪人を取り締まって善人を保護している。もうひとつは政府との約束を固く守って、その法に従って保護を受けている。そのように国民は政府と約束して法を作る権力を政府に与えたのだから、決してこの約束を破って法に背いてはいけない。
この理屈で考えれば、罪人を捕らえて刑に処するのは、政府に限って許された仕事であって、一市民が関係するものではない。どんな事情があるにしても、決して自ら手を出してはいけない。よって「赤穂の義士」は大間違いである。
政府が法を作るにあたっては、なるべく簡単にするのがよい。すでに法が定まった以上は、必ず厳格にそのねらいを実現しなくてはならない。人民は政府の定めた法律をみて不都合だと思うことがあれば、遠慮なくこれを論じて訴えるべきである。すでにその法を認めて、その法についてあれこれ勝手に判断せずに、つつしんでこれを守らなければならない。
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