濵ちゃんの足跡

前のページ 次のページ 目次へ戻る

閑話休題(75)現代語訳「学問のすすめ」福沢諭吉 /斉藤 孝(訳)=ちくま新書

第17編 人望と人付き合い(明治9年11月)

十人が十人、百人が百人、「誰それさんはたしかな人だ。頼もしい人物だ。この処置を任せても、決して間違いないだろう。この仕事をまかせても必ず成功するだろう」と、あらかじめその人柄をあてにして、世の中一般から期待される人を称して、人望ある人物と言う。およそ人間世界には、人望の大小軽重はあっても、仮にも人に当てにされるような人でなければ、何の役にも立たない。この人望は実際の力量で得られるものではないし、財産が多くあるからといって得られるものでもない。ただ、その人の活発な知性の働きと、正直な心という徳をもって、次第に獲得していくものだ。その結果として栄誉があるが、栄誉と人望はバランスをとって求めて得るべきものなのだ。

また、引っ込み思案にならないように、活発な境地に入り、多くの事物に接して、多くの人と交際し、自分のことも知られ、相手のことも知り、自分自身の持っている実際の力を十分に発揮して働き、自分のやったことが、さらに世の中のためになるようにする必要がある。そのためには、第一に、言葉について勉強しなければならない。第二に、表情・見た目を快くして、一見してただちに人に嫌な感じを与えないようにすることも必要である。第三に、交際をどんどん広げることである。交際の範囲を広くするコツは、関心をさまざまに持ち、あれこれをやってひとところに偏らず、多方面で人と接することにある。人間のくせに、人間を毛嫌いするのはよろしくない。

以上。学問のすすめ(初編―17編)より抜粋。

前のページ 次のページ 目次へ戻る