濵ちゃんの足跡

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閑話休題(86)映画「ゆれる」

映画のタイトルは「ゆれる」です。06年7月に上映された映画で、下名はDVDで観ました。西川美和監督の作品です。物理的な象徴は「つり橋」です。子供の頃から遊んだつり橋です。人間の揺れ動く心理がテーマです。非常に真面目な兄(香川照之)と、ちょっと不良っぽい弟(オダギリジョー)の話です。香川照之は、この映画で助演男優賞を総ナメにしています。

物語です。ちょっと不良っぽい弟は、それまで付き合っていた女性(真木よう子)を田舎において、東京にでて、プロのカメラマンになって成功します。真面目な兄は、田舎で旧家を守りながら、父がやっているガソリンスタンドで働いています。その女性もガソリンスタンドで働いており、兄と女性はだんだん仲良くなっていきますが、兄は真面目さ故に、仕事以上の関係には踏み込めません。

母の法事で久しぶりに弟が帰ってきます。弟はその女性とその夜を共にします。次の日、3人は、子供の頃に遊んだつり橋に行きます。兄は、雰囲気を感じて、わざとはしゃぎます。それをまずいと思った弟は、つり橋をどんどん渡って、川上に写真を撮りに行ってしまいます。

兄と女性が残されますが、女性が弟を追ってつり橋を渡ろうとしたとき、兄が後ろを追ってきていて、つり橋の上で、口論になります。その結果、女性がつり橋から落ちて、水死します。果たして、兄が殺意をもって突き落としたのか、事故か。兄の心理は時間とともに揺れます。弟も見ていたのか見えていなかったのか。兄を助けるには、黙っているべきか、真実をいうべきか。裁判の経過とともに揺れます。結局、弟が、兄弟の関係を修復するためには真実をいうしかないと、「私はみていた。真実はこうだ」と証言し、兄は刑に服します。でも、それが真実であったかどうか。

そして7年。兄が出所します。弟は兄を迎えに行きますが………、

兄は、兄で、本当に殺意があってやったのか、それとも瞬間頭にきて突き落としたのか、変わりようのない生活に飽きて罪を被ろうとしたのか、いろんな揺らぎが写し出されます。弟は、弟で、揺らぎます。観ているひとの受止め方で真逆の見方になってしまいます。

是非、一人で見ないで、複数人でみて、いろんな見方を議論してみて下さい。下名は確認のために2度観ました。

人間心理の弱さ、微妙さを知ることのできるいい映画です。

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