濵ちゃんの足跡

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記憶

満1歳。一升餅を背負わす。一升と一生をかけて、一生食べ物に困らない、一生健康に、一生円満にという願いだ。それから、お金、お餅、そろばん、筆などを並べて、何を最初にとるかで進路を占う。私が何を取ったか両親に聞いたことがあるが残念ながら記憶がない。

2歳違いの弟に取れれたと言ってやんちゃしたと母親が言っていた。どこの行くか分からないので、弟はおぶって、私は帯を臼に結んでその範囲だけ動けるようにしていたと。弟は母と寝ていた。私は祖父の部屋にひとりで寝させられた。この世にひとりしかいないように不安になってそっと足を伸ばして祖父に触れた。

太ももの内側に割りと目立つ凹みがある。幼児のころの注射の痕だ。筋肉萎縮だろうと思う。軍医は注射器を投げていたという。そんな雰囲気の残る頃。当時は注射で事故が起こるとは考えていなかったかもしれない。やけどの痕もある。炬燵に入れようとして、火のついた炭が落ちた。

幼児の頃の記憶。甘酸っぱい。濱村

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