濵ちゃんの足跡

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生きた教材

100万個の自主回収を決めた。D902のAC充電器に100個の不良部品が混ざったという。100万個の数は大きいが台湾ではひとつのロットの中。特定できないという。不具合モードは発熱。最大で60℃。発火はしない。ちょうどその頃、MMCのトラックのタイヤが外れる事故が多発していた。

D902は国産初のカラー液晶搭載機。市場を出し抜いてはいけないとお客様が他社に発売の了解をとった。売れに売れた。充電器の事故で発売が止まった。少なくとも500億円の売上の損失。喉から手がというのはこういうときのことをいうだろう。100個全部事故が起こったとしても実費は1億円以下。おそらく10件以下だから1000万円も掛からない。

このとき会社全体を考えた。「M電機、おまえもか!」という新聞タイトルが見えた。4兆円の品質管理が疑われる。自部門の売上を優先してはいけないと思った。1週間悩んで回収を決めた。500億円を捨てた。

翌週はじめの部課長会議。今回の処置をどう思うか聞いた。まさに生きた教材であった。濱村

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