濵ちゃんの足跡

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201.何故,SOCが儲からないか(1)(一橋大中屋特任教授との議論)

日本の半導体メーカーは、2000年代に入って、メモリーを捨て、SOCに走った。このSOCが赤字の原因になっている。いったいどこを間違えたのだろうか。

(1)ケータイの世界

・Gシリーズが成功した。

ケータイの共通プラットフォーム「Gシリーズ」が成功した。04年から構想が練られ、06年にはG1としてらくらくホンに搭載された。その後、G2、G3、G4と進化。更にLTEの実現に至って、モデム部とアプリ部が分割されたものの、現在まで、ド社のケータイの共通プラットフォームとして確立されている。この間、G2チップは65nmルールで30MTr、G4チップでは48nmで100MTr超となり、S/Wも10Mステップを超えた。G1のケータイメーカは1社。現在は5~6社で共同開発され、使用されている。

・Gシリーズでも海外進出できない。

これだけ大規模のSOCが、毎年拡張されていながら、Gシリーズは海外進出できていない。そもそもド社オリエンテッドなプラットフォームであることは間違いないが、海外に全く通用しないという代物でもない。何故か。ケータイメーカが海外進出に消極的であるからである。各社とも中国市場をトライしたものの、早々に引き上げている。中国市場の商習慣(文化)を知らないで失敗している。一方、これだけ優秀なGシリーズのチップ製造を全面的に任されているR社も海外に進出できていない。チップ化技術は優秀でも、セットの知識に欠ける。

・標準化委員会がリードできない

グローバルに通話できなければならないケータイは、世界中のオペレータやメーカーが話し合って標準を決め、それに沿った形で、製品の開発競争がなされる。第1世代のアナログ、第2世代のPDC/GSM、第3世代のW-CDMA、第3.9世代のLTEと、ほぼ10年毎に大きな技術変革が行われてきた。その中で、日本チームはいい位置で標準を決め、開発競争にも先行するけれども、市場が成熟した段階では何故かそこにはいない。PDCもW-CDMAもガラタバゴスになった。

・i-Cloudがつくれない

PCメーカーだったはずのA社が、突然、ケータイ市場に参入してきた。iPhoneである。ケータイメーカからみると、あるいは一方のPCの雄、I社やイ社からみるとあまりにも唐突のように見えた。i-Phone人気が絶好調の中、今度はスレートPCの先鞭iPadが発売された。一見アップルには戦略がないように見えた。ところが、仕上げがi-Cloudである。ユーザデータをCloudに置くことによって、ユーザはいつでも最新のデータをアクセスすることができる。i-Phoneでも、iPadでも、Macでも、同じデータを何の心配もなくアクセスできる。端末をTPOに応じて使い分けることができる。通信の進化、デバイスの進化で実現できた。あまりにもスケールが大きくて、あまりにもスピーディで、専門家でも読みきれなかった。

この章のまとめ

日本人には100MTr超、10Mステップ超の大規模SOCをつくる能力がある。それはGシリーズが照明している。しかし肝心のことができない。日本人はコンセプトメーキングができない。単なる技術的な優劣は議論できても、ビジネスモデルを含む概念の議論ができない。日本語ではないというハンディがあるが、それは中国や韓国のように徹底した英語教育で解決できる。それ以外の大きな問題が横たわる。順に核心に近づいていこう。

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