濵ちゃんの足跡

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閑話休題(26)紫式部と源氏物語

皆さんよくご存知のように、「源氏物語」は紫式部によって書かれたものですが、その紫式部という人は非常に几帳面な人で、紫式部日記というものが残されています。その日記によると、1008年には源氏物語が宮中で読まれ、評判になっていたと記述されていますので、この年を起点に2008年を満1000年としています。

源氏物語は今の原稿用紙にして4000枚に相当する超長編大恋愛物語ですが、残念ながら原本は残っていません。現存しているものはすべて写本ですが、これが素晴らしい。ひらがな書きのものもあれば、絵入りのもの、木版によるもの、現代口語訳のもの、外国語訳のもの、本だけではなく、屏風や扇ものなどがあります。

話は少し横道に逸れますが、なぜ歴史を勉強しないといけないかというと、この答えは、文春文庫、藤原正彦著の「この国のけじめ」という本に明確に書かれています。日本人がもっている行動様式や考え方は、長い歴史の中で醸成され、それが我々個人の中にきっちり染み込んでおり、逆にそれをちゃんと意識して身につけることが大事だと言っています。

注:藤原正彦は数学者。作家新田次郎の次男。

例えば、子供の頃に卑怯なことをしてはいけないと何回も言われたことを思い出します。同じ泥棒でも火事場泥棒をすることは卑怯、同じいじめでも弱いものいじめは卑怯というように、同じことをしたとしてもこれはもっといけないことだという価値観を教わります。同じように、女性は弱いものだから守れとか、年長者を敬えとか、憲法や法律のように明文化されていないけれども、我々日本人には当たり前のこととして身についています。少し難しい言葉になりますが、誠実、慈愛、惻隠、忍耐、礼節、名誉、孝行、公の精神などの教えは、すべて日本人が長い歴史の中で培ってきた価値観です。

源氏物語から即そのままこういう価値観を学び取ることはできませんが、歴史的価値の高いものにふれることによって、そういう感覚を少しでも感じ取れればと思います。

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