濵ちゃんの足跡

前のページ 次のページ 目次へ戻る

閑話休題(60)現代語訳「学問のすすめ」福沢諭吉 /斉藤 孝(訳)=ちくま新書

第2編 人間の権理とは何か(明治6年11月出版)

人間がこの世に生まれるのは、天によるものであって、人の力によるのではない。人はお互いに尊重しあい、それぞれがその社会的役割を果たして、お互いに迷惑をかけることがないとすれば、それは、もともとが同類の人間で、同じ天の下に生まれた同じ人類だからである。

よって、その人と人の関係は本来的に同等だ。但し、その同等というのは、現実のあり方が等しいということではなくて、権理(諭吉は権利という字を使っていない)が等しいということだ。天がこの世に人を生まれさせるにあたって、体と心の働きを与えて、この基本的人権をもつものとしたのだから、どんなことがあっても、人間がこれを侵害することはできない。

いま、この明治の日本にいるものは、いまの時代の法律に従うと約束したのである。ひとたび国の法律と定まったことは、個人のために不便があったとしても、正式な改正の手順を踏まずには、これを変えることはできない。気をつけてこの法律を守るべきである。これは人民の責任である。だから、人民がもし暴力的な政治を避けようとするならば、いますぐ学問に志して、自分の才能や人間性を高め、政府と同等の地位にのぼるようにしなければならない。

前のページ 次のページ 目次へ戻る