濵ちゃんの足跡

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閑話休題(72)現代語訳「学問のすすめ」福沢諭吉 /斉藤 孝(訳)=ちくま新書

第14編 人生設計の技術(明治8年3月出版)

人間が世の中を渡っていくようすを見てみると、自分で思っているよりも案外悪いことをし、自分で思っているよりも案外愚かなことをし、自分で目指しているよりも案外成功しないものである。成功を企てながら失敗する者を傍からみていると、実に抱腹絶倒のバカをやっているように思えるけれども、それを企てた本人は必ずしも愚かでもなく、よくよく事情を尋ねてみれば、それぞれにまたもっともな理由があるものだ。結局、世の中の事情の変化は生き物であって、前もってその動きを知ることは簡単ではない。そのため賢い人間でも案外バカなことをしてしまうのである。

このような不都合を防ぐための手段はいろいろあるのだが、いまここにあまり人の気づかない一方法がある。何だろうか。それは、事実の成否・損得について、ときどき自分の心の中でプラスマイナスの差し引き計算をしてみることである。商売でいえば、棚卸しの決算のようなものだ。ただ流れにまかせていきているだけではなく、自分自身の有様を反省し、「生まれていままで自分は何事をなしたか、今は何事をなしているか、今後は何事をなすべきか」と、自身の点検をしなければならない。

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